第37章 青と、海と、涙と《カラ松END》
園芸用品売り場は、お店の外にあった。
ガーデニングに使う用品に混ざって、色とりどりの花が売られていた。
「…どれにしようかな」
カラ松「さくらは、何色が好きなんだ?」
「えっ…?」
何色……
わたしは、何色が好きなんだろう?
服やなんかは、無難な黒や茶色を選ぶことが多いけれど……でも、自分が好きな色なんて考えたことがなかった。
「わたしは……わからないや。だから、白い花にする」
カラ松「白か……じゃあ、これがいいんじゃないか」
カラ松くんは、すぐ傍にあった白い花を手に取った。
……スノーフレーク。
鈴蘭のような水仙のような、かわいらしい花。
「……かわいいね。初めて見た」
ふと見ると、花の横にあるプレートに、花の名前と一緒に、スノーフレークの花言葉が書かれていた。
『みんなを惹き付ける魅力』。
カラ松「まるで、さくらみたいだな…」
「みんなを惹き付ける魅力……」
そんな魅力がわたしにあるとは思えないけれど。
でも、カラ松くんがそう思ってわたしにこの花を選んでくれたのなら、この花にしよう。
「うん。これにする」
わたしは、カラ松くんが渡してくれたスノーフレークの花を大切に抱き寄せた。
カラ松くんは、この花を何に使うのか、とか、これを買ってどうするのか、とかは、何も訊かなかった。
「じゃあ、これがわたしの花なら、カラ松くんの花も買わないとね」
カラ松「…えっ、俺のも買うのか?」
「もちろん」
わたしは、スノーフレークの傍に置いてあった、青い忘れな草を手に取る。
お花を買いたいと言ったときに、真っ先に頭に浮かんだのが、この花だった。
カラ松「……わすれなぐさ?」
「うん。すてきなお花でしょ?」
わたしは、買い物かごにスノーフレークと忘れな草を入れて、カラ松くんの手を引いた。
もうすぐ夜が来る。