第37章 青と、海と、涙と《カラ松END》
外は、宵の闇に包まれていた。
空には、白い月がうっすらと浮かび上がり、わたしたちの行く道を照らしている。
「寒いね……」
カラ松「うん……そうだな」
運転席のカラ松くんに声をかけると、カラ松くんは、うなずいて、左手でわたしの右手を握ってくれた。
そのまま、指と指を絡ませ合って、お互いに優しく揺らす。
カラ松くんの手は、大きくてあたたかかった。
今、わたしたちは、白いワゴン車で、国道を走っている。
運転は、カラ松くん。
わたしは、助手席。
「カラ松くんって、免許もってたんだね」
カラ松「ああ… 高校を卒業したあと、6人で自動車学校に通ってとったんだ」
「そうだったんだ」
カラ松「さくらは、免許もってないのか?」
「一応もってるよ。ペーパーだけどね…」
カラ松「そうか。今度、さくらの運転する車にも乗ってみたいな」
「ふふ……そうだね、いいよ」
いいよ、なんて簡単に言ってから、ずきりと胸が痛んだ。
そんな約束、叶うはずがないのに。
「……あ、カラ松くん。あそこのホームセンターでいいんじゃない?」
カラ松「…そうだな。あそこなら売ってそうだな」
カラ松くんは、反対車線のホームセンターの駐車場に車を入れて、お店の入り口に1番近いところに駐車した。
ふたりで車から降りて、ホームセンターに向かう。
「ね、手つなご?」
カラ松「うん」
わたしが手を差し出すと、カラ松くんは、寂しそうに笑って、手を繋いでくれた。
さっきまでのカラ松くんは、ここにはもういない。
今わたしが手を繋いでいるのは、優しくて、かっこよくて、わたしが大好きなカラ松くん。わたしの……王子様。
カラ松「これとか、良さそうじゃないか?」
カラ松くんは、陳列棚に並べられた少し太めのロープを指差した。
「…うん。いいかも。それにしよう」
カラ松「なんか、あっさり決まっちゃったな。他に欲しいものとかある?」
カラ松くんは、ロープを買い物かごに入れて、わたしの顔を覗き込んだ。
カラ松くんの大きくてきれいな瞳に、わたしの顔がうつりこむ。
「……お花。お花、買いたい」