第36章 君がくれる口づけは《カラ松END》
カラ松くん……いないのかな。
みんなも、どこかに出かけているのかもしれない。
ならば、尚更好都合だ。
わたしは、誰かが帰ってくる前に逃げなくちゃ、と思い、一気に階段を駆け下りた。
そして。
「……ッッッ!!」
わたしは、足を止めた。
ガン、と頭を撃たれたような衝撃が走り、頭の中が、真っ白になる。
熱い…
身体が熱い…
全身の血液が、一気に一カ所に集まり出すような感覚。
息が出来ない……苦しい……
居間のふすまが開いていた。
そして、そこから、廊下に向かって、鮮血が飛び散っていた。
飛び散った血は、廊下の床を、壁を、天井を、真っ赤に染めている。
なに、これ……
なんなの……?
なにが起きたの……?
居間の中に……なにがあるの?
確かめたい。でも、見たくない。今すぐ、何も見なかったことにして、屋根裏に引き返したい。
そんな矛盾した気持ちがこみあげてくる。
わたしは、一歩、足を踏み出した。
そして、また一歩、また一歩……
少しずつ、居間へと近づいていく。
飛び散った血をまたいで、ふすまから居間の中をのぞいた。
その瞬間。
「……っえ?」
悲鳴をあげることもできなかった。
声が、出なかった。
わたしの目の中に飛び込んできたのは、
目が痛いほどの、赤、赤、赤、あか……
そして、その赤の中に倒れたみんなの姿だった。