第36章 君がくれる口づけは《カラ松END》
口を動かして、ヘアピンを回す。
すると、思いのほか、手錠はあっさりとはずれた。
「うそ……はずれちゃった」
まさかこんなに簡単にはずれるとは思っていなくて、拍子抜けしてしまう。
右手が自由になったので、右手で同じようにして左手の手錠もはずす。
こんなに上手くいくなんて……もしかしたら神様が味方してくれているのかもしれない。
わたしは、はずれた手錠を捨てて、ベッドからおりた。
ふと、手の中にあるヘアピンの存在を思い出す。
どうするか迷った挙げ句、わたしは、それをポケットに押し込んだ。
「ごめんね、カラ松くん……」
わたしは、屋根裏部屋に向かってぽつり呟き、出口のドアを開けた。
ドアをあけると、そこには下にむかって梯子が伸びていた。
そっと下を見ると、そこは、寝室の隣にある物置のような部屋だった。
たしかに、この部屋に誰かが入って行くのを見たことがないし、わたしもちらっと覗いたことはあるけど立ち入ったことがなかった。
「ここに屋根裏部屋があったんだね……」
慎重に梯子をおりて、床に下り立つ。
部屋の中のあまりの埃っぽさに咳き込みながら、ドアを開けて廊下に出る。
そのときから、なんかおかしいな、とは思っていた。
だって……
あまりにも……
静かだったから。