第35章 壊れゆく《カラ松END》
『先日の件は、一松とさくらが付き合っていると勘違いしていることにした。たぶん、さくらは、俺がぜんぶ知っていることに気付いていない。』
『さくらと一松は、本当に付き合い始めたらしい。俺に嘘を突き通すためらしいが、それでもイライラする。ちょっとお仕置きが必要だ。
ふたりが付き合っていることをトド松に言ったところ、案の定、ぶち切れて、十四松とふたりでさくらに俺のかわりにお仕置きしてくれた。』
『最近、さくらは、一松とよくデートに出かける。そればかりか、さくらは、一松に対してぼーっと熱い視線を送っている。
一松は一松で、最初のころとは比べ物にならないくらい、さくらに優しい。
何かがおかしい。こんなはずじゃなかったのに。』
『さくらは、俺とセックスしていても、何かべつなことを考えている気がする。
たぶん、一松のことだ。
さくらは俺のことが好きだったはずなのに。
なんでこうなったんだ?
邪魔だ。みんな、みんなみんなみんな邪魔だ。』
最後のほうは、気持ちが昂っているせいか、筆圧が濃くなっていたり、ところどころ力を入れすぎたせいで紙に穴が空いていた。
……怖い。怖い、怖い、怖い……!!
なんで、なんでこんな……
カラ松くんは、なんなの? 何者なの?
どうして、全部知っているの?
家にいないと思っていたあのときも、あのときも、あのときも、全部本当は家にいて、どこかに隠れていて、わたしのことを見ていたの?
……ということは、今だって……
わたしの頭がその結論に達したそのとき。
???「それ、見ちゃったんだな…?」
背後から声がして、反射的にわたしはそちらを振り向いた。
そして、見た。
顔からわずか数センチの距離でわたしを見つめるカラ松くんを。
「…ッから、松くっ…」
声をあげかけた瞬間、カラ松くんの手が、わたしの手首を掴んだ。
わたしの……日記帳をもっているほうの手の手首を。
カラ松「……なあ、さくら。俺、それ見ていいって言ったか?」
ふるふると必死に首を横にふる。
カラ松「いずれ見せてやるとは言ったけど、俺は日記を見ていいなんて一回も言ってない。そうだよなァ?」
今度は、首を縦にふる。
それが精一杯だった。