第35章 壊れゆく《カラ松END》
……日記帳?
ノートの1ページ目をひらく。
そこには、今から8年前の日付が書かれている。
『高校の入学式だった。
クラス割りが発表されたが、奇跡的にブラザーたちと同じクラスだった。
これで小学校から数えて連続10年間、6人全員同じクラスということになる。やはり、俺たちはデスティニーなのだろう。』
当たり障りのない、カラ松くんらしい日記だった。
けれども、まだ手の震えはおさまらない。
わたしは、震える指でページをめくった。
『担任のティーチャーは、些か厳しい女性だ。
授業中に騒いでいた十四松を、いきなり怒鳴りつけて廊下に立たせた。ただ新しい学び舎が嬉しくてはしゃいでいただけだというのに…。
ちなみに、そのあと、おそ松も一緒に廊下に立たせられていたが、アイツは自業自得だ。』
……何ら変なところはない。ふつうの日記だ。
というか、前々から思っていたけれど、カラ松くんって弟たちには優しいけど、おそ松くんには厳しいっていうか冷たいっていうか、なんか塩対応だよね。
そんなことを思いながら、次のページに目をうつす。
『ついに出会ってしまった!運命の女性!
彼女は、俺のななめ後ろの席に座っている。名前は、梅野さくらというらしい。話したことはまだない。
でも、これは絶対に運命だ。回り出したぜ、恋の歯車!』
……え?
ドクン、と心臓が音をたてた。
わたしは、もう1度日付を確認する。
入学してから2週間しか経っていない……
そんな。カラ松くん……このころからわたしのことを気にしてくれていたの?
『休み時間、さくらと教室ですれ違った。香水とはまた違う、なんだか花のような甘い香りがした。
他のガールとすれ違っても、何の香りもしないのに。やっぱり好きな子だからなんだろうか。』
『今日も、さくらは可愛かった。どんな表情も可愛いんだが、とりわけ笑顔が可愛い。まるで、天使か女神みたいだ。
俺にも、あの笑顔を向けてほしい。さくらと話をしてみたい。』
『さくらに話しかけようとしたが、やはり勇気が出なかった。
何かきっかけがあればいいんだけど… 今のところ、特に接点がない。どうすれば話せるだろうか。』
ま、まじか……
そこに綴られたカラ松くんの想いに、思わず顔が熱くなる。