第35章 壊れゆく《カラ松END》
チクチクチク、という時計の音だけが、広い部屋の中に響いている。
……なんだか、退屈だな。
やることがなくて暇、というのもあるけれど、
みんながいないと、寂しいし心細い。
……あ、もしかして。一松くん、これを心配してたのかな?
「あっ、そういえば、一松くんが本を買ってきてくれたんだった♪」
ふと、一松くんが買ってくれた文庫本の存在を思い出す。
読むのまだ途中だった。みんなが帰ってくるまで、あれを読もう。
わたしは、文庫本を取るために、2階に向かった。
2階の箪笥の1番下、トド松くんの引出しのすぐ下の段が、わたしの引出しだ。
思えば、すべての始まりは、この箪笥だった。
あの日、カラ松くんが高校の卒業アルバムを取ってくるようにわたしに言って……それで、わたしが一松くんの引出しを開けちゃって……隠し撮りされたわたしの写真を見つけちゃって……
ふと、上から2段目、カラ松くんの引出しに目がいく。
あのときは、卒業アルバムを取ることしか考えていなかったから、中身はあまりよく見なかったけど……
もしかしたら、この引出しに……
わたしは、ごくりと唾を飲み込んだ。
そっと、カラ松くんの引出しに手を伸ばす。
伸ばした手が小刻みに震え出したが、構わずに引出しに手をかける。
やけに重たく感じる引出しを開けて、おそるおそる中身を覗き込む。
「……香水……サングラス……コンタクトケース……鏡……アクセサリー……特に変わったものはない……かな」
中のものを1つ1つ手にとって確認しながら、呟く。
……と、そのときだった。
「ん……? なんだろう、これ?」
引出しの奥、ファッション雑誌の下に、1冊のノートが隠されていた。
手に取ってぱらぱらとめくってみると、そこには、黒いボールペンで文字がぎっしりと書き込まれていた。