第34章 青空と君の背中《カラ松END》
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一松「ねえ、さくら…」
「ん? どうしたの、一松くん?」
さくらが、僕を振り向いて優しく笑う。
無邪気で、純粋で、人を疑うことを知らない無垢な笑顔。
僕たちにあんなに酷いことをされたのに……あんなに穢されたのに……さくらの笑顔は、真っ白なままだ。
「……寒い? もうお家に戻る?」
僕の無言を、さくらはそういう意味に取ったらしい。
……帰りたいわけないのに。
僕は、さくらとこうして一緒に散歩をして、どこまでも歩いていきたいのに。ずっと一緒にいたいのに。
一松「…ううん、そうじゃない」
僕は、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
離したくない… 離れたくない…
でも、僕は、さくらを脅してでもしないと、一緒にはいられないんだ。
だって、さくらが本当に想っている人は、僕じゃないから。
一松「ね……ホテル行こっか」
「……え? ホテル?」
さくらの顔が、一瞬ひきつった。
「こんな昼間から……?」
一松「そうだよ。だめ…?」
「だめじゃ……ない、けど……」
さくらは、優しい。
僕のお願いは、なんでも聞いてくれる。
こんなゴミクズにも、優しく接してくれる。
僕は、さくらの手を引いて、歩く速度を上げた。
そうして歩くこと十数分後。
ホテル街の入り口が見えてきた。
「一松くん……そんなに溜まってるの?」
一松「…べつに。でも、無性にさくらのこと抱きたくなった」
「……っ、そ、そう」
……あ。赤くなった。かわいい。
適当なホテルに入り、部屋を選ぶ。
昨日パチンコで勝ってお財布の中身が潤ってるから、けっこう高めの部屋を選んだ。