第34章 青空と君の背中《カラ松END》
Side 一松
さくらにチョコレートをもらった。
なんてことはない、バレンタインの義理チョコだ。
いや、さくらのことだから、義理チョコじゃなくて友チョコとして渡してきたのかもしれない。
僕は、さくらにもらったチョコレートを居間のテーブルの上に置いて、シャッターを切った。
本当は、食べずにずっと取っておきたいけれど、さすがに、チョコレートを保存しておくことはできないから、こうして写真にして残しておこうというわけだ。
あー、さくらがつくったチョコか……そう考えただけで、なんかムラムラしてきた。
一松「……ヒヒッ、僕ってほんとクズ」
思わず呟いた、そのとき。
カラ松「ただいまー……って、一松だけか」
タイミング悪く、カラ松兄さんが帰ってきた。
一松「おかえり、カラ松兄さん。今日部活は?」
カラ松「ああ、今日は部活は休みだ」
一松「ふーん……さくらは?」
カラ松「家の用事があるとかで帰っていったぞ」
カラ松兄さんは、僕のとなりに腰をおろして、机の上に紙袋の山を置いた。
一松「うわ……今年もすごいね」
カラ松「ああ、これか…?」
カラ松兄さんは、紙袋の山を一瞥して、嘲るような笑みを浮かべた。
カラ松「……ったく、うざったい連中だよな」
一松「え……?」
思わず絶句する。
うざったい連中……?
なんだ、今の?カラ松兄さんが言ったの……?
カラ松「次から次へと押し寄せてきて、これ食べて、こっちももらって、これも、これも、って……いい加減にしろって言いたかったな」
一松「え……で、でも、カラ松兄さん……いつも、チョコの数は多ければ多いほどいいって……」
カラ松「ああ、それは去年までの話な。今年からは、ちがう」
そう言って、カラ松兄さんは、鞄からチョコレートの包みを取り出した。
それだけが、カラ松兄さんの特別ってこと……?
そのさくらからもらったチョコだけが。
カラ松「俺は、さくらからのチョコしかいらない。他の連中なんて、どうでもいい。このゴミの山だって、迷惑なだけだ」
カラ松兄さんの口から出てくるひどい言葉たちに、僕は息をのんだ。
カラ松兄さん、どうしちゃったの?
こんなの……僕が知っている兄さんじゃない。