第34章 青空と君の背中《カラ松END》
我ながらに大胆だなって思うけど、そのおかげで、わたしは、カラ松くんと仲良くなれた。
そうして距離が近づいても、カラ松くんは、やっぱり優しかった。
いつも、わたしのことを気遣ってくれて、笑わせてくれて、女の子として扱ってくれた。
やがて、カラ松くんの家にも遊びに行くような仲になり……カラ松くんだけじゃなく、おそ松くん、チョロ松くん、一松くん、十四松くん、更にはあまり学校に来ていなかったトド松くんとも仲良くなっていき……
気がつけば、わたしの毎日は、とても楽しくきらきらしたものになっていた。
季節がめぐって、バレンタインデー。
季節がめぐっても、わたしの想いは色あせることはなく。
わたしは、お母さんに教えてもらいながら、一生懸命ブラウニーをつくって、学校にもっていった。……もちろん、カラ松くんに渡すために。
けれども、余裕をもって朝早くに登校したのにもかかわらず、教室では、カラ松くんの席にすでに人だかりができていた。
『カラ松くんっ。ねえ、これ、私がつくったの。よかったら食べて』
『私のももらって。これ、高級チョコレート店の新作なの』
『私のは、生チョコ! ちゃんと1から作ったんだよ』
みんな、可愛らしくラッピングされたチョコレートを、カラ松くんに受け取ってもらおうと躍起になっている。
対するカラ松くんは、チョコレートを1人ずつ受け取り、優しい笑顔を振りまいていた。
……1番に渡せなかったのは悔しいけど、でもいいや。
だって、ああいうふうに、みんなに優しいカラ松くんが好きだから。
わたしがそう思って、席につこうとした、そのとき。
不意に、誰かに腕を掴まれた。
驚いて顔をあげると、そこにいたのは、さっきまで女の子の輪の中にいたはずのカラ松くんだった。
「あ……カラ松くん。おはよう」
カラ松「おはよう、さくら。俺に何か渡すものがあるんじゃないか?ん〜?」
カラ松くんは、わたしに右手を差し出して、微笑みかけてくる。
ふと、さっきカラ松くんが中心にいた女の子の輪を見ると、女の子たちは、あきらかな嫉妬の眼差しでわたしを睨みつけていた。
……こわい。
「カラ松くん……今じゃなきゃだめかな? ほら……みんな見てるし」
カラ松「えっ、だめ。さくらが来るのずっと待ってたんだぞ」