第34章 青空と君の背中《カラ松END》
突然あらわれた彼は、わたしを囲っていた男子生徒たちを、次々に殴りつけ、気絶させてしまった。
この複数の男子生徒を、たった1人で打ち負かしてしまったのだ。
そして、彼は、わたしに手を差し伸べて、「大丈夫?怪我してないか?」と優しい声で言った。
それが、カラ松くんだった。
それからというもの、カラ松くんのことが頭から離れなかった。
カラ松くんって、あんなに優しい顔するんだ……
なのに、わたしを助けてくれたときは、すごく凛々しい顔をしてたな……
かっこいいな……
柄にもなく、そんな乙女なことばかりを考えて、眠れない夜を過ごした。
教室でも、目で追ってしまうのは、やっぱりカラ松くん。
授業中も、ななめ前の席のカラ松くんの背中をぼーっと眺めていて、先生に何度も注意された。
カラ松くんを観察していて、わかったことがある。
それは、カラ松くんは、女の子からとても人気があるということ。
休み時間になると、クラスの女の子たちは、カラ松くんの机のまわりに集まり出す。そして、『次の休みこそは私と出かけよう』だとか、『今日の放課後あいてないの?』だとか、『カラ松くんはどんな女の子が好き?』だとか、とにかくわかりやすいアピールをしている。
時には、他のクラスから女の子がカラ松くん目当てで遊びにくることもあった。
……そんなみんなのアイドル的な存在のカラ松くんに、わたしがお近づきになれるはずもなく。
わたしは、いつも、涙を噛み締めながら、遠くからそんなカラ松くんと女の子たちの様子を眺めていた。
けれども、このままでいいなんて思ってはいない。
わたしは、ちょっとでもカラ松くんと仲良くなるために、彼と同じ、演劇部に入部することを決意した。