第34章 青空と君の背中《カラ松END》
カラ松くんは、演劇部の新星だった。
この前の大会では、1年生なのにも関わらず、先輩を押し退けて主役を演じたと、クラスの女子が言っていた。
入学当初、わたしは、『カラ松くん』という人にはさほど興味がなかった。
クラスが一緒だったから、顔と名前は知っていたけれど、それはカラ松くん以外の5人の兄弟も同じ。
わたしにとって、カラ松くんは、ただのクラスメイトという認識でしかなかった。
しかし、つい1ヶ月ほど前。
転機がおとずれた。
その日、わたしが帰ろうと昇降口に向かうと、わたしの下駄箱の中に白い封筒が入れられていた。
その場で封を切ってみると、中身は、これまた白い紙だった。
その紙には、男の子特有の角張った字で、
『はじめて会ったときから好きでした。放課後、体育館裏に来てください。待ってます。』
と書かれていた。
……え、なにこれ? ラブレター?
誰かの悪戯に違いないと思いつつ、心のどこかではちょっぴり期待していた。
その証拠に、わたしは、手紙を無視せずに、その足で指定された体育館裏に向かった。
結論として、そこにはちゃんと男子生徒がいた。
ただし、1人ではなく、複数いたのだ。
彼らは、わたしを取り囲み、『あんたが梅野さくらちゃん?』とたずねてきた。
そうですけど、と答えると、男子生徒のうちの1人が、わたしの腕を背後から押さえつけ、別な1人が制服を脱がせようとしてきた。
突然の出来事に、わたしは、悲鳴をあげた。
しかし、今度は口を手でふさがれてしまう。
そのとき、一瞬だけ、わたしの頭は冷静になった。
わたしは、今からこの人たちに輪姦されるんだ……と、悟った。
わたしが絶望した次の瞬間。
わたしの目の前に、
王子様があらわれた。