第33章 誰よりも君が好き《トド松END》
おそ松「おう、よろしくー!」
おそ松くんは、差し出された彼女さんの手を握って、ぶんぶんと縦にふる。
……さっきまで顔は普通とか言ってたくせに。でれでれしちゃって。
おそ松「でもさー、ぶっちゃけ、どう?うちの末弟」
『どうって……?』
おそ松「こう見えてこいつ結構奥手だろ? もうキスとかした? ホテル行った?」
トド松「えっ…ちょっ……! おそ松兄さん、いきなり変なこと訊かないでよ! ごめんね、答えなくていいからね」
トド松くんが、あわてて彼女さんに言う。
しかし、彼女さんは、まるで動じていなかった。
『……行きましたよ、ホテル』
彼女さんの口から発せられた言葉に、全員が固まった。
彼女さんの目が、何故かわたしのほうを見る。
「……え?」
『だから、行きました。ホテル。ねっ、トッティ?』
トド松「え……あ、ああ、うん……」
彼女さんに威圧的に訊かれて、トド松くんはうなずく。
……トド松くん、ホテル行ったんだ。
そっか、そりゃあそうだよね。恋人同士だものね。そういうことをしたっておかしくないし、むしろ当然だよね。
そう考えたら、涙がすぐそこまでこみ上げて来た。
「ごめんなさい……わたし、ちょっと具合が悪いから帰るね」
トド松「ええっ!? 大丈夫、さくらちゃん?」
トド松くんの問いには答えず、みんなに背を向けて走り出す。
……わたしはバカだ。
こうなってから初めて気付くなんて。
トド松くんに彼女ができてショックだったのは、トド松くんがわたしを好きじゃなくなったからではない。
わたしが、トド松くんを好きだったからだ……
どうして今まで気がつかなかったんだろう。
別なことにばかり気をとられて、肝心な自分の気持ちに気付けなかった。
大切なものは、こんなにすぐ傍にあったのに……
走りながら、涙があふれてくる。
わたしは、それを拭うことなく、走り続けた。
今は、ただ、一刻も早く家に帰りたかった。