第33章 誰よりも君が好き《トド松END》
可愛い女の子だった。
小さくて、くりくりした大きな目の、小動物みたいな子だった。
おそ松「あー、あれがトド松の彼女? べっつに顔はふつーじゃね?」
おそ松くん……前から思ってたけど、女の子の顔に関しては判定厳しくない?
チョロ松くんが好きな猫耳の地下アイドルだって、結構かわいいのに、クラスにいるレベルとか言ってたし…
「…わたしは普通に可愛いと思うけどな〜。ふたり並んでるとすごくお似合いだよね」
ズキッ
自分で言ったことなのに、何故か胸が痛んだ。
おそ松「……苦しいなら言わなきゃいいのに」
「えっ? 何か言った?」
おそ松「いや、なんもー? てか、ちょっと冷やかしに行こうぜ。ついでにどんな子なのか、お兄ちゃんが見極めてやんよー」
「えっ…でも、邪魔しちゃ悪いよ…」
そう言って止めようとしたときには、時既に遅しだった。
おそ松くんは、ベンチから立ち上がり、「トド松〜!」と叫びながらトド松くんに手を振った。
対するトド松くんは、こちらに気がつくと、あからさまに顔をしかめた。
トド松「げっ! おそ松兄さん!?」
おそ松「んだよ、トド松〜! こんなとこで何してんのー?」
トド松「何って、見りゃわかるでしょ? デートだよ、デート!」
ここでわたしだけ無視するのは逆におかしいので、仕方なく、おそ松くんについてトド松くんたちのところへ歩いていく。
「やっほ、トド松くん」
トド松「あ……さくらちゃん」
『ねえ、トッティ。この人たち、だあれ?』
急に近づいて来たわたしとおそ松くんを見て、トド松くんの彼女さんは、頭にはてなマークを浮かべた。
トド松「あ、ごめんね。この人は、僕の1番上の兄さんで……こっちの女の子は……」
トド松くんの目が、こちらを見た。
その瞳は、なんだか寂しそうで、悲しそうで……
けれども、それも一瞬のこと。トド松くんは、すぐに笑顔に戻った。
トド松「…こっちの女の子は、僕の高校のクラスメイトだよ」
『へえ〜、そうなんだ。あ、はじめまして。私、トッティの彼女です。よろしくお願いします』
……彼女。
わかっていたはずなのに、いざ本人の口からそれを聞くと、なんだか胸が痛い。