第33章 誰よりも君が好き《トド松END》
「…うん、ありがと」
おそ松くんの手から、ココアの缶を受け取る。
包み込むようにして缶をもつと、ココアの熱が手に伝わってきた。
「……あれ? おそ松くんは何飲むの?」
おそ松「あ、俺はこっち」
そう言って、おそ松くんは、煙草の箱をかかげた。
……ほんと好きね、煙草。
「肺、真っ黒になっちゃうよ」
おそ松「いーの。もうどうせ真っ黒だし」
そう言えば、おそ松くん、高校のころからヘビースモーカーだったもんね。
よく、おそ松くんが校舎裏で煙草を吸っているのを見かけていたし。
おそ松くんは、煙草を1本取り出すと、それを口にくわえて、ライターで火をつけた。
わたしも、買ってもらったココアの缶のプルトップを抜いた。
おそ松くんの煙草から煙が、わたしのココアから湯気が、空にむかって立ちのぼる。
おそ松「……ほんとはさ、少し心配だったんだよね」
不意に、おそ松くんがそんなことを言った。
「え……?」
おそ松「さくら、ここ1週間くらい、ずっと元気なかったからさー。なんか悩んでるのかなーって」
元気なかったこと、ばれてたんだ……
みんなの前では普通にしてたつもりなのに。
おそ松「……で?」
「で……?って、なにが?」
おそ松「さくらは何に悩んでんの?」
「そ、それは……」
この悩みをおそ松くんに相談するのは……何かちがう気がする。
だって、おそ松くんは、わたしが一松くんのことを好きだって思ってるし、それに、一松くんに幸せになってほしいって言ってた。
きっと、親身に相談になんて乗ってくれない。
と、そのときだった。
おそ松「……あり? あそこにいんのって……トド松じゃね?」
その名前に、思わずびくっと肩がはねた。
おそるおそるおそ松くんの視線の先を追う。
……と、公園の入り口に、トド松くんの姿を見つけた。
そして、トド松くんの隣には……
見知らない女の子がいた。