第33章 誰よりも君が好き《トド松END》
トド松くんに彼女ができたと告白された日から、トド松くんは、毎日のように出かけるようになった。
たぶん、彼女さんと会っているんだとおもう。
他のみんなは、そのことを知らないのか、知っているのか、わからないけど、特にトド松くんに何か言ったりはしなかった。
そんなことが1週間ほど続いた、ある日のこと。
おそ松「なあ、さくら。ちょっと散歩行かねー?」
唐突に、おそ松くんに散歩に誘われた。
おそ松くんからどこか出かけようって言ってくるなんて、珍しい。
おそ松くんは、何か用事がない限り、自分からは外に出ようとしない。ちなみに、パチンコと競馬は、その『用事』に含まれている。
「どうしたの、珍しいね。おそ松くんが散歩なんて」
おそ松「んー、なんつーの? 今日はさくらと出歩きたい気分?」
「……そうなんだ。いいよ、支度するからちょっと待ってて」
急いで部屋着から私服に着替えて、髪の毛を適当になおす。
そして、おそ松くんとふたり、連れ立って家を出た。
今日は、少し風が冷たい。
太陽が出ていてあたたかいはずなのに、風があるせいで肌寒く感じる。
おそ松「……あー、なんか寒いね。上着羽織ってくればよかったかもな」
「そうだね。…あ、公園で何かあたたかい飲み物でも買う?」
おそ松「ん、そだねー。さくらのおごりなー」
「もうっ、わたしお金もってないし」
おそ松「うそうそ。それくらい奢るって」
わちゃわちゃと騒いでいると、あっという間に、公園についてしまった。
おそ松くんは、わたしをベンチに座らせて、近くの自動販売機に飲み物を買いに行ってしまった。
ベンチに腰をおろして、ふう、と息をつく。
やっぱり、1人になると考えちゃうな……トド松くんのこと。
トド松くん……やっぱり、もうわたしのこと好きじゃないのかな。
それはいいことのはずなのに、なんだか寂しい。
ほんと……嫌な女だ。あっちもほしい、こっちもほしい、と色んなものに手を出して……トド松くんの気持ちには応えられなかったくせに。
おそ松「おまたせ〜。ココアでよかった?」
おそ松くんの声で我に返る。
顔をあげると、おそ松くんが、わたしにホットココアの缶を差し出していた。