第30章 はんぶんこ《十四松END》
「はーっ、疲れたー! けど楽しかったね!」
帰り道、さくらちゃんは、満足げに言った。
さくらちゃんが楽しかったと言ってくれて嬉しいし、何より、ぼくもさくらちゃんと一緒にいれて楽しかった。
もっと……さくらちゃんを知りたいと思った。
「あっ、十四松くん、見て! 今川焼きだよ!」
さくらちゃんが指差したほうを見ると、そこには、屋台店があって、いろんな種類の今川焼きが売られていた。
十四松「さくらちゃん、今川焼き好きなの?」
「うん、大好き。あんこもいいけど、クリームのが特に好き」
十四松「そっかあ〜。ぼくもクリーム大好きだよっ!」
うちの兄弟は、みんな今川焼きが好きで、母さんが半端な数をもらってきたりすると、いつも取り合いになる。
「ね、十四松くん。もうすぐ夕飯だからまるまる1個食べるのはきついけど、半分くらいなら食べれる気がする」
十四松「じゃあ半分こにするー?」
「うんっ、ありがと」
今川焼きのクリームを1個買って、それを真ん中からきれいに半分に割った。
割った瞬間、今川焼きからほかほかと湯気がたちのぼった。
「わーっ、おいしそう…!」
十四松「はい、こっちのおっきいほうさくらちゃんにあげる!」
「えっ、いいの? やった、ありがとう」
さくらちゃんは、ぼくの手から大切そうに今川焼きを受け取ると、それをはむはむと少しずつ口に入れた。
幸せだな、と思った。
さくらちゃんとこんなふうに学校の外で2人で過ごせて、
今川焼きを半分こして食べて、
まるで、彼氏と彼女みたいだ……
ぼくは、半分こにした今川焼きを、一気に頬張った。
クリームのあまーい味が、口いっぱいに広がった。