第30章 はんぶんこ《十四松END》
ゲームセンターにつくと、さくらちゃんは、店頭にあるUFOキャッチャーに駆け寄った。
そのUFOキャッチャーの景品は、女の子が好きそうな可愛い色とりどりのくまのぬいぐるみ。
「わーっ、かわいい! わたし、このシリーズ好きなんだよね!」
はしゃぐさくらちゃんが可愛くて、絶対にこのくまを取らなきゃ!と思った。
ぼくは、鞄から財布を出して、UFOキャッチャーに小銭を投入した。
「えっ、十四松くん!? なにしてるの?」
十四松「だってさくらちゃんこれ欲しいんでしょー? ぼく、UFOキャッチャーめちゃくちゃ得意だから、取ってあげるよ!」
「う、うそ……嬉しい! ありがと、十四松くん!」
さくらちゃんに見守られながら、ボタンでクレーンを操作する。
前に一松兄さんに教えてもらったやり方で、クレーンを動かしていく。
そして。
「うそ!ほんとに取れた…!! 」
落ちて来た黄色いくまのぬいぐるみを取って、さくらちゃんに手渡す。
十四松「はい、さくらちゃんっ」
「ありがとう、十四松くん! ほんとに取れると思わなかった…!」
十四松「えへへ〜。だから言ったでしょ? ぼく得意だって」
「うん…ほんとに上手なんだね。びっくりした……ありがとう」
さくらちゃんは、取ってあげた黄色いくまの頭を撫でて、嬉しそうに笑った。
この笑顔のためなら、たとえ得意じゃなくても、何万円払っても取ってあげたと思う。
それくらい、さくらちゃんの笑顔はかわいかった。
それから、ぼくたちは、ゲームセンターの中にあるゲームを片っ端からやった。
さくらちゃんは、ゲームが下手くそで、でも負けず嫌いだから、もう1回!あと1回!これで最後!と言いながら、たくさんお金を消費していた。
……なんか、ちょっと知らない一面を知れてうれしいかも。
だって、きっと、このさくらちゃんの顔は、カラ松兄さんも知らない顔だと思うから。