第28章 守りたい《十四松END》
物置小屋にたどりついたとき、わたしは全身びしょ濡れになっていた。
急いでいたため、傘をさすのすら忘れていた。
急いで物置小屋に駆け寄り、引き戸をこじ開ける。
狭い物置の中に、十四松くんがこちらに背中を向けて座っていた。
……やっぱりここにいた。
「十四松くん……!!」
わたしは、十四松くんの背中に向かって叫んだ。
すると、十四松くんは、わたしを振り向き、驚いたように目を見張った。
十四松「えっ、さくらちゃん!?」
「十四松くん……こんなところで何してるの?まさか……」
また自傷行為をしているの?とたずねようとした、そのとき。
くぅーん、と小さな犬の鳴き声がした。
「えっ……?」
十四松「あのね、さくらちゃん、兄さんたちには内緒にしててほしいんだけど……」
十四松くんは、そう言って、立ち上がった。
立ち上がった十四松くんの向こう側に、ダンボール箱が置いてあった。
わたしは、そのダンボール箱に歩み寄り、中を覗き込む。
中には、小さな白い仔犬が座っていた。
「えっ、わんちゃん……?」
十四松「うんっ。ぼくね、むかしから、捨てられてた犬とか猫とか拾ってきて、この小屋で飼ってるんだ」
そうだったんだ……
十四松くん、たしかに昔から動物に優しかったもんね。
十四松「今はこの仔犬しかいないけど、ちょっと前までもっとたくさんいたんだよー」
「そうなんだ……ふふ、かわいい」
わたしは、腰をかがめて、仔犬の頭を優しく撫でた。
「……でも、安心した。十四松くん、どこにもいなかったから……」
十四松「あっ、それでぼくのこと探しに来てくれたの?」
「うん。あと、トド松くんが十四松くんのこと探してたよ。ライン全然既読にならないって心配してた」
十四松「あっ… そういえば、スマホ家に置きっぱなしだった! あははー!」
何はともあれ、十四松くんがなんともなくて良かった。
それに、小屋で捨て犬の世話をしてたなんて……
やっぱり、十四松くんは十四松くんだ。
今も昔も、変わらず優しい。