第28章 守りたい《十四松END》
その日は、朝からひどい雨が降っていた。
降りしきる雨が、屋根にあたって鈍い音をたてている。
今日は、一松くんとデートに行く約束をしていた。
でも、この雨じゃデートは延期にしたほうが良さそうだ。
「ね、一松くん……」
居間で猫と戯れている一松くんに、声をかける。
「今日のデート、今度にしない? 外、すごい雨だし…」
一松「…うん、そうだね」
一松くんは、案外あっさり頷いてくれた。
一松くんも、この雨の中を外に出かけるのは、億劫だったのかもしれない。
「次の晴れの日にしようよ」
一松「うん、いいよ。そうしよ…」
しかし、翌日も、そのまた翌日も、雨はあがらなかった。
それどころか、3日目には大雨に強風が追加され、やがて、大型台風が関東を直撃するというニュースを知った。
そして、その予報どおり、台風がやって来た。
おそ松「台風だってさー。ったく、こんな天気じゃパチンコも競馬も行けねーじゃん」
窓の外から大荒れの空を眺めながら、おそ松くんが大きな溜め息をつく。
チョロ松「いい機会じゃん。これを機に、おそ松兄さんもちゃんと職探したほうがいいよ」
おそ松「んなこと言ったって、外に出れねーんだから、ハロワだって行けねーだろ」
チョロ松「ハロワに行かなくたって、家でできることもあるじゃん……」
あきれ顔で首をふるチョロ松くんの隣で、トド松くんがスマホをいじりながら、
トド松「ねえ、バカ松兄さんとシコ松兄さん。そんなことどうでもいいからさ、十四松兄さんどこに行ったか知らない?」
と、口をひらいた。
トド松「ちょっと用事があったからラインで呼び出そうと思ったんだけど、ぜんぜん既読つかないんだよね……」
一松「…なんでラインで呼び出すわけ? 普通に探せばいいじゃん、どうせ家の中にいるんだし」
おそ松「んだよ、一松〜。めずらしくマトモじゃん」
おそ松くんは、一松くんの肩に手を回して、その頭をわしわしと撫でた。
一松くんは、顔を赤くして、されるままになっている。
トド松「いや、僕だって家の中探したよ? でも、どこにもいないんだもん」
カラ松「靴はあるのか? 靴がないなら、外に出かけたのかもしれないぞ」
トド松「靴はあったよ。だから、家の中にいると思う。……素足で出かけたんじゃなければ」