第28章 守りたい《十四松END》
そのあと、十四松くんは、安心したのか、わたしを抱き枕にしてすうすうと寝息をたて始めた。
やっぱり、怖い夢を見て不安になったのかもしれない……
そっと、眠る十四松くんの髪の毛にふれる。
柔らかくてさらさらの黒髪。
手を櫛にして梳くように撫でると、十四松くんは、気持ちよさそうに笑った。
今度はいい夢見てるかな……
ふと、十四松くんの左手に目がいく。
左手の手首に、痛々しい切り傷がいくつもある。
まだ、傷痕は消えないみたいだ。
「十四松くん……」
結局、わたしはこの人の力になれていない。
あんな偉そうなことを言っておいて……十四松くんの力になりたいなんて言っておいて……
もちろん、その言葉は嘘じゃない。わたしの本当のきもちだ。
でも……
ふーっと息をついて、十四松くんの左手を取る。
そして、その傷痕を、つーっと指先でなぞった。
……十四松くん、まだ話してくれないのかな。
十四松くんが自分の身体を傷つける理由を。
十四松くんを苦しめているものを。
十四松くんの心の中を。