第28章 守りたい《十四松END》
???「さくらちゃん……ね、さくらちゃん……」
名前を呼ばれて目をひらくと、辺りはまだ真っ暗だった。
今、何時だろう……
てか、こんな時間に、だれ……?
またトド松くん? もう……トイレくらい一人で行ってよ。
心の中で悪態をつきながら、声がした枕元を見る。
……と、そこにしゃがんでいたのは、トド松くんではなかった。
「十四松くん……?」
そこにいたのは、十四松くんだった。
十四松くんは、いつもカパッと開けている口を、珍しく閉じていた。
薄暗がりの中だったけれど、ちゃんと見える。十四松くんは、すごく寂しそうな顔をしていた。
「どうしたの、十四松くん……? 何かあったの?」
十四松「ううん……何もないんだけど、なんか眠れなくなっちゃって」
十四松くんが眠れないだなんて、めずらしい。
いつもは、誰よりも大きな口を開けて、誰よりも大きないびきをかいて爆睡しているのに。
もしかして、怖い夢でも見たのかな……?
「こっち、来る?」
わたしは、掛け布団を少し持ち上げて、十四松くんに隣に来るように促した。
すると、十四松くんの顔に、ぱーっとお花が咲いたような笑みが広がった。
十四松「わーいっ!! やったー! ありがと、さくらちゃん!」
「わかった、わかったから…! みんなまだ寝てるから静かにね」
しーっと人差し指を唇にあてると、十四松くんは、はっとしたように口をつぐみ、わたしの真似をして、しーっと人差し指を唇にあてた。
……子供みたいでかわいい。
十四松「じゃあ、お邪魔しまーす」
十四松くんは、わたしの布団にもぐりこんでくると、わたしの背中に腕をまわしてぎゅーっと抱きついてきた。
十四松「さくらちゃん、あったかーい……」
「ふふ、そうかな? 十四松くんだってあったかいよ?」
十四松「ほんとっすかー? じゃあ、お揃いだねっ!」
「うん、お揃いだっ」
鼻と鼻が触れてしまいそうなほど近い距離で見つめ合い、くすくすと笑い合う。
さっきの十四松くんの顔を見たときは、さすがに心配になったけど、この様子だと、大丈夫そう……かな?