第27章 幸せになりたい《チョロ松END》
一松くんが出て行ってしばらくして、彼と入れ替わるように、チョロ松くんが寝室に入って来た。
チョロ松くんは、相変わらず不機嫌そうな、どこか迷惑そうな顔をして、わたしの枕元に座った。
チョロ松「……で? 僕に何か用なの、さくらちゃん」
鋭い目で威圧されて、思わず泣きそうになる。
ここで別に用はありませんなんて言ったら、殺されてしまうかもしれない。
「あの……チョロ松くんと、お話しがしたくて」
チョロ松「……どんな?」
「えっと……その……」
わたしは、口ごもった。
一松くんは、まるで、わたしに今からチョロ松くんに告白しろと言わんばかりだった。
けれども、わたしにそんな勇気があるはずがない。
なんて言おうか迷っていると、不意に、チョロ松くんの手が、わたしの頬に伸びてきた。
チョロ松「なんで泣いてんだよ」
あわてて頬に手をやると、そこは涙でぐっしょりと濡れていた。
どうやら、自分でも気付かないうちに涙があふれていたようだ。
「ごめん……なんでもない」
チョロ松「なんでもなくないでしょ」
チョロ松くんのその言葉は……
やっぱり棘はあるんだけど、どこか優しい言い方で……
ちょっぴり期待してしまうわたしがいた。
もしかしたら。
今なら、言える……かもしれない。
「チョロ松くん……ごめん」
チョロ松「どうして謝るの?」
「わたし……あなたのこと、」
言え、言うんだ。
振られたっていい。
今しか伝えられないことを……わたしの本当の気持ちを、ぶつけるんだ。
チョロ松「……どうしたの、さくらちゃん?」
チョロ松くんが、わたしの顔を心配そうにのぞきこんでくる。
いつもの優しい表情で。困り眉で。あたたかい瞳で。
その瞬間、わたしは、耐えきれず、チョロ松くんの首に抱きついた。
チョロ松「…っ!!」
「ごめんね、チョロ松くん…っ、わたし、あなたのこと……
好きになってしまいました……っ」
言えた……
やっと、言えた……
そのとき、チョロ松くんの手が、わたしの身体を抱きしめた。
「……っ!?」
チョロ松「……なんで? なんで、僕なの? こんな……こんな都合のいい展開……あるはずないよ……!」
「え?え…それって、どういう……?」