第27章 幸せになりたい《チョロ松END》
目をひらいた瞬間、びっくりした顔の一松くんと目が合った。
一松くんは、わたしの布団の横に腰をおろして、わたしの顔をのぞきこんでいた。
「い、…いちまつ、くん……?」
一松「……大丈夫? すげーうなされてた……」
そっか、わたし、うなされてたんだ……
あんな夢を見たから……
「…だ、大丈夫。心配かけてごめん」
一松「別に、いいよ…」
一松くんは、ぶっきらぼうにそう言って、わたしの手を引いた。
一松「あのさ……言いたくなかったら言わなくていいんだけど、なんの夢見てたの?」
「えっ……」
正直、さっきの夢のことは誰にも言いたくなかった。
というよりも、思い出したくない、というのが本音だった。
一松「やっぱり言いたくないよね……」
「……で、でも、どうしてそんなこと知りたかったの?」
そうたずねると、一松くんは、わたしの目を真っすぐに見据えて、答えた。
一松「チョロ松兄さんの名前、呼んでたから……」
えっ……?
チョロ松くんの名前を呼んでたって……
わたしが?
そんな……夢の中で叫んだ言葉、全部口に出てたってこと?
「あ……あの……いちまつくん」
一松「あーあ……もう少しでほんとに僕のものになりそうだったのにな」
一松くんは、そう言うなり、わたしの上に覆い被さり、わたしの身体を優しく抱きしめてきた。
「……っ、一松くん?」
一松「でも、ちょっと気付いてた。さくらが僕でもカラ松でもなく、チョロ松兄さんを目で追ってること」
「えっ……わたし、そんなにチョロ松くんのこと意識してた?」
そんなの、完全に無自覚だった。
やっぱり、一松くんは、わたしのことちゃんと見ていてくれてるんだな…
一松「たぶん、カラ松もうすうす気付いてるよ。だから、……もう気にする必要ないよ」
「でも……そんなこと言ったって……わたし、チョロ松くんに嫌われてるし」
わたしは、正直に言った。
すると、一松くんは、はあ、と溜め息をついて、
一松「チョロ松兄さん、ここに呼んでくるから。あとはふたりで話し合って」
と、ちょっぴり呆れたように言った。
話し合ったって、何も解決しないのに……
でも、今のわたしは、一松くんの言葉にうなずくことしかできなかった。