第26章 なんで?《チョロ松END》
午前中のこと。
今日も、昨日と同様、みんな朝早くから出掛けてしまい、家にはわたしとチョロ松くんだけが取り残された。
チョロ松くんは、居間でタウンワークとにらめっこしながら難しい顔をしていたので、わたしは邪魔しないようにと、二階にいることにした。
それにしても、ひまだ……
何もすることがない。
何かしなくちゃいけないこと、なかったかな……
二階のベランダから、ぼーっと空を眺めながら、指を折りながら、やるべきことを確認する。
お風呂は洗ったし…
掃除機もかけたし…
洗濯物は十四松くんとトド松くんがたたんでくれたし…
洗い物はおそ松くんの当番だったし…
あっ、そういえば、冷蔵庫の中に何もなかった気がする。
今日の夕飯の当番はわたしじゃないけど、ひまだし買い出しに行こうかな。
わたしは、居間に行って、チョロ松くんに、
「チョロ松くん、買い出し行こう」
と誘った。
てっきり、いつものように、「うん、いいよ。荷物重いもんね、僕がもつよ」って返ってくるとばかり思っていた。
それなのに。
チョロ松くんは、わたしの顔を見るなり、嫌そうに顔をしかめた。
チョロ松「……は? なんで?」
「なんでって……冷蔵庫の中、何もなかったから……」
チョロ松「あっそう。じゃあ、僕ひとりで行ってくるからいいよ。さくらちゃんは家にいて」
「えっ……?」
冷たく突き放すような言葉。
なんで? なんでなんでなんで……?
わたし、チョロ松くんに何かした……?
考えても、わからない。
昨日は、チョロ松くんと一緒に布団を干して、そのあと一緒にシャワーをあびて、一緒にお昼寝して……すごくいい感じの雰囲気だった。
「ね、ねえ、チョロ松くんっ!」
居間を出て行こうとするチョロ松くんの手をつかみ、引き止める。
チョロ松「なに?」
「わたし……その、……チョロ松くんを怒らせるようなことしたかな?」
チョロ松「別に何もしてないんじゃない?」
「じゃあ、どうしてわたしのこと避けるの……?」
意図せず、泣き出しそうな声が出た。
そのとき。
ダンッ
チョロ松くんが、わたしの手首をつかんだ。
そして、わたしは、なす術もなく床に押し倒されていた。