第25章 好きになってもいいですか《チョロ松END》
ビニールの袋をあけて、中から棒アイスを取り出す。
ぺろりと舐めてみると、グレープフルーツの甘酸っぱい味が広がった。
「ん〜、これ美味しい!」
チョロ松「そうなんだ、よかったね。あ、僕にもちょっと舐めさせて」
「うん、いいよー」
わたしは、チョロ松くんにアイスを差し出した。
チョロ松くんは、それをぺろっと一舐めした。
チョロ松「んっ、ほんとだ。おいしい〜」
「わたしたちってさ、前から味覚が似てるよね」
チョロ松「…あー、そうかも! ほら、覚えてる? 高校のとき、おそ松兄さんがふざけて買ってきたコンポタ味のアイス! あれ、みんな不味いって言ってたけど、僕とさくらちゃんだけ美味しいって食べたよね」
「うん、覚えてるよ! あれは、ほんとに美味しかった! あと、逆に、みんなが美味しいって言ってたジュースを、わたしとチョロ松くんだけ美味しくないって言って飲まなかったこともあったよね」
チョロ松「あったね〜。ココナッツか何かのジュースだよね? あれを美味しいって言うみんなの気持ちがわからない…」
「うん… ひとくちでギブだったもん……」
ふと、なつかしくなって、笑みがこぼれる。
いや、なつかしいっていうのも本当なんだけど、
なんだかチョロ松くんとわたしの似てるところを見つけられて、うれしいっていうか、なんていうか…
「わたしたちって、似てるのかもしれないね」
チョロ松「ふふ、味覚だけはね」
「他にも似てるところあるかもしれないよ?」
チョロ松「そう? なら、これからもっとさくらちゃんのこと知って、似てるところ探さなきゃ」
これから……
もっと、知って……
深い意味がないのは分かるんだけど、なぜか胸がどきっとした。
わたしは、その胸のどきどきを誤摩化すように、
「ね、テレビつけていい? もうすぐ見たい番組始まるから」
と、テレビのリモコンを手にとった。
チョロ松「うん、いいよ。見たい番組って、なあに?」
「えっ………と」
本当は、見たい番組なんてない。それに、この時間帯にどんな番組があるのかも、よくわからない。
「あ、あーー、やっぱりテレビはいいかも。それより、お昼寝しようかな?」
チョロ松「え……? う、うん、そうなの?」
「うん! おやすみ、チョロ松くん!」