• テキストサイズ

【おそ松さんR18】君がため

第24章 救いを求めて《おそ松END》




おそ松くんは、この雨にも関わらず、傘をさしていなかった。

そのため、彼の身体は全身びしょぬれ。

それなのに、おそ松くんは、走るどころか急ぐ素振りすらない。


「なんか危なっかしいかんじだね」

トド松「……うん。ちょっと行ってみる?」

「うん」


わたしとトド松くんは、頷き合って、歩く速度を上げた。

そして、おそ松くんに追いついて、うしろから声をかけた。


トド松「おそ松兄さん」

「おそ松くん。どうしたの、傘もってなかったの――え?」


おそ松くんがわたしたちを振り向いた瞬間。

わたしは、思わず、言葉を失った。


おそ松くんの目には、光がなかった。

疲れきったような、やつれた瞳が、わたしをとらえる。


「……おそ松くん?」


あきらかに、いつものおそ松くんではなかった。

何かが、という域ではない。全てが、いつものおそ松くんとは違った。


トド松「おそ松兄さん、どうしたの? 大丈夫?」

おそ松「……ああ…うん…」


トド松くんの問いかけに、おそ松くんは、どこか上の空で答える。


「そんなびしょ濡れで……風邪ひいちゃう」


わたしは、おそ松くんの隣に駆け寄り、自分の傘の中に彼を入れてあげた。

すると、おそ松くんは、わたしを見つめ、ふっと寂しそうに笑った。


おそ松「さくらは優しいなあ……」

「優しいとか関係ないよ……」

おそ松「そういうところ。すっげー好き」


おそ松くんは、わたしの手を引いた。

そして。


ちゅ…


キス、された。

家の外で。トド松くんの目の前で。いきなり。


「ちょっ……どうしちゃったの、おそ松くん」

トド松「そうだよ、おそ松兄さん。僕がいること忘れちゃったの?」

おそ松「……」


おそ松くんは、何も言わなかった。

ただ、きゅっと唇を噛み締めて、俯いていた。


……おそ松くん、どうしちゃったの?

何があったの?

どこに行ってたの?


訊きたいことはたくさんあるのに、声が口から出てこなかった。

だって、今のおそ松くんは、あまりにも儚げで…

突いたら消えてしまいそうな、そんな気さえしたから。



わたしとトド松くんは、濡れたおそ松くんを連れて家に戻った。

不安な気持ちと、ちょっぴり胸に感じた嫌な予感を押し殺して。



/ 464ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp