第24章 救いを求めて《おそ松END》
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その翌日のこと。みんなが外出してしまって、家にはわたしとおそ松くんしかいなかった。
おそ松くんは、居間で競馬新聞を読んでいる。
対するわたしは、そんなおそ松くんの隣に腰をおろして、大して面白くもない再放送のドラマを見ていた。
と、そのとき。
おそ松「『亮くん』ってさあ…」
おそ松くんの口から、亮の名前が出てきて、わたしは、びくっとした。
「う、うん……?亮がどうかしたの?」
おそ松「へえ、呼び捨てにしてるんだ? 結構親しい関係だったの?」
「別に…そういうわけじゃ…」
おそ松「昨日、別れ際に、あとで連絡するって言ってたよな? 連絡、来た?」
わたしは、思わず、ポケットのスマホをぎゅっと握りしめた。
「き、来た……けど」
おそ松「ふーん。なんてー?」
おそ松くんは、新聞を眺めながら、淡々とした口調で言った。
「その……」
おそ松「なに? 俺には言いづらいこと?」
「えっと……あの……」
どう言えばいいんだろう。
本当のことを言っても怒らないだろうか?
わたしが答えるのを渋っていると。
不意に、おそ松くんが、新聞を床に置いて立ち上がった。
そして。
「……へっ?」
わたしの手首をつかみ、ひねりあげた。
痛かった。涙が出そうなほどに。
「いっ、痛い! 何するの、おそ松くん…っ」
おそ松「……答えられないなら、スマホむりやり奪うけど?」
「……っ!」
見上げたおそ松くんは、冷たく笑っていた。
その表情を、わたしは久しぶりに見た。
「わ……わかった…わかった、から……言うから」
おそ松「ん、言って」
「その……再会祝いにお茶にでも行こうって…誘われて……」
おそ松「ふーん? で、さくらはなんて返したの?」
「機会が…あったら、って……」
わたしが正直に答えると、おそ松くんは、わたしの手首を放してくれた。
痛む手首をさすっていると、今度は、肩をつかまれて、そのまま床に押し倒された。
「……っえ?」
おそ松「もうひとつ、隠してることあるよなあ?」
おそ松くんは、八重歯を見せて笑った。
いつもは可愛いと思うその八重歯が、
獣の牙のように見えた。