第24章 救いを求めて《おそ松END》
その日の夜、夜ごはんを食べ終えて、二階で本を読みながらくつろいでいると。
めずらしく、スマホが鳴った。
誰からだろうと思い確認すると、それは、亮からのメールだった。
『今日はどうもね。まさかさくらに会えると思ってなかったからうれしかった! 再会祝いに、今度、お茶でもしようよ。』
絵文字も顔文字もない、簡素なメール。
相変わらずだなあ、と思わず唇がほころんだ。
『わたしも亮に会えて嬉しかったよ! お茶は、今度機会があったらね!』
送信してから、ふと、機会があったら、っていつだろうと考える。
だって、わたしは、この家にいる限り、一人で外出することは許されない。
いや、この先どうなるかは分からないけど……今は、誰かが一緒じゃないと外には出られない。
『そっか。僕、日曜は休みだからさ、もしひまな時があったら連絡してよ』
『うん、わかった。じゃあ、またね』
きっと、もう会うことはないんだろうな。
こんな約束をしたところで、守れるはずがないんだ。
わたしは、スマホを床に放り投げた。
そして、手元の本に目を戻した。
そのとき。ふたたびスマホが震えた。
確認すると、亮から返信がきていた。
またね、って送ったはずなのに。
『ねえ、さくら。もしかしてなんだけど、今なやんでることとかない? なんか、会ったとき、ちょっと落ち込んでるかんじだったから…。余計なお節介だったらごめん。』
メールの文面を見た瞬間、涙腺がゆるむのを感じた。
そっか、亮、気付いてくれたんだ……
わたしが、今とても苦しんでいることに。
でも、それを言うわけにはいかない。
『何もないよ。ありがとう。』
そう返すと、亮からの返信は途絶えた。
きっと、わたしの言葉を信じてくれたのだろう。
メールって楽だな……
顔を合わせることも、声を聞かせることもないから、感情を隠しやすい。平気で嘘もつける。
でも
一瞬、ほんのわずか、
心がぐらりと揺れたのを感じた。
このまま、こうしてこの家にいても、未来は見えないんだ。