第24章 救いを求めて《おそ松END》
商店街のクレープ屋さんにつくと、おそ松くんは、ショーケースを眺めながら、「どれにする?」とたずねてきた。
正直、さっきのおそ松くんの話を聞いてから、食欲がなくなっていたのだけれど、でもせっかく連れてきてくれたのに何も食べずに帰るのは申し訳ない。
わたしは、おそ松くんの隣に並んでショーケースを眺め、1番中身がなさそうなバナナクレープを指差した。
「これ食べたい」
おそ松「…ん? これでいーの?」
「うん……わたし、こういうシンプルなのが1番好きなの」
おそ松「ふーん? ま、いいや」
おそ松くんは、「注文してくるから待ってて」と言ってレジに向かった。
わたしは、その場で、おそ松くんがクレープを買ってきてくれるのを大人しく待った。
おそ松くんは、最初のころと比べて、大分わたしを信用してくれるようになっていた。
たぶん、わたしがもう逃げない……逃げられないと思っているのだろう。
誰かと一緒になら外出をしても何も言わないし、外部との連絡手段であるはずのスマホも返してくれた。
だから……わたしは、その気になれば、いつだって逃げることができるのだ。
???「あの、すみません」
「きゃあっ!!」
不意に背後から肩に手を置かれて、わたしは、思わず悲鳴を上げた。
考えごとをしていたところへの不意打ちだったから、尚更びっくりして大きな声が出た。
???「ああ、すみません。驚かせちゃって…」
「あ、は、はい……こちらこそすみません」
謝りながら、肩に手を置いてきた主を振り向く。
そこにいたのは、ぴしっとした黒いスーツの男の人だった。
年は、わたしと同じくらい。顔は、俗に言うイケメンというやつだ。
と、そのイケメンは、わたしの顔を見るなり、ぱんと手を叩いた。
???「やっぱり…! 梅野さくらだよね?」
「えっ? えっ? な、なんでわたしの名前……」
突然名前を言い当てられて、頭が混乱してしまう。
???「覚えてない? 僕だよ。亮だよ」
「え……亮?」
その名前は、わたしがよく知る名前だった。