第20章 離れられない《一松END》
一松くんの手は、冷たくて、ひんやりとしていた。
「一松くん……」
一松「さくら……」
わたしたちは、そのまま、唇を重ね合った。
しっとりと重ねるだけのキスから、だんだんと深いものに移行していく。
何度も角度を変えながらキスを繰り返し、お互いを求め合う。
「…っはあ……ん」
息継ぎのひまもなく続けられるキスに、だんだん息があがっていく。
久しぶりのキスに、わたしも、一松くんも、興奮していた。
と、一松くんの手が、わたしの胸をまさぐった。
「ちょっ……ここ病院……っ」
一松「いーじゃん。声おさえてればバレないよ」
一松くんは、尚もわたしの胸をまさぐりながら、ヒヒッと笑った。
と、そのときだった。
がらり、と病室の扉がひらき、わたしたちは、反射的に離れた。
中に入ってきたのは、一松くんの担当の看護婦さんだった。
『あ、松野さん。面会時間、もうすぐ終わりますので……』
一松「……ん。わかりました」
一松くんは、冷静に答える。
それを聞いた看護婦さんは、わたしに一礼して、病室を出て行った。
「……ほら。危なかったじゃん」
一松「見られてないからオッケー。それより、さくら、今日泊まっていけば?」
「え……?泊まる??」
ここの病院は、手術やよっぽど病態が悪いときを除いて、患者以外の人間が寝泊まりするのは禁止されているはず。
「どうやって?」
一松「ベッドの中に隠れてればバレないよ……たぶん」
「えっ! だっ、だめだよ、そんなの!」
一松「……さくらは相変わらず真面目ちゃんだね」
「一松くんはどうしてそんなに不真面目になっちゃったの…。高校のころはあんなに真面目で秀才だったのに」
一松「僕は、もともと真面目じゃないしこんな人間だよ。あんたが気付いてなかっただけ」
そう言うなり、一松くんは、わたしの手を引いた。
「わっ…!」
手を引かれたわたしは、バランスを崩し、一松くんの上になだれ込んだ。
一松「…ほら。布団の中、入って」
「ええっ…だから、だめだって言って……」
一松「あっ、また看護婦さん来る。早くして」
一松くんは、半ば強引にわたしをベッドの中に引き入れると、上に掛け布団をかぶせた。
……苦しい。酸素が薄い。