第2章 再会【一松、おそ松+十四松】
おそ松「あーあ、泣いちゃった? そんなにオレのこと嫌?」
「嫌とか…そんなんじゃなくてっ……」
おそ松「じゃあ、なに? 嫌じゃないなら、受け入れてくれるよな? きのう一松とシたみたいに」
「……!!」
どういうこと……?
おそ松くん……きのうのこと、知ってるの?
わけがわからず困惑していると、おそ松くんの唇が耳に寄せられた。
そして、そのまま、ぺろりと耳を舐められた。
「ひゃっ……」
おそ松「このまま帰るなんて、許さない。ずっとここにいてよ、さくら」
「む、無理だよ、そんなのっ。放して!」
わたしは、おそ松くんを力任せに押し退けた。
無理かと思ったけど、おそ松くんは、案外あっさりと突き放すことができた。
そのまま、荷物をつかんで、居間から逃げ出す。
おそ松くんが追ってくるかなんて確認している暇はなかった。
一刻も早く、ここから出なくちゃ……!
それか、誰かに助けを……
十四松「あーーっ! さくらちゃん!!!」
玄関先に、今帰ってきたであろう十四松くんが立っていた。
手に野球のバッドを持っていることから、おそらく外で遊んできたんだと思う。
「じゅ、十四松くん! 助けて!」
十四松「えっ? えっ? どうしたの、さくらちゃん?」
助けを乞うわたしに、十四松くんは目を白黒させた。
きっと、十四松くんなら、助けてくれる…! それに、おそ松くんも、十四松くんの言うことなら聞いてくれそう…
「あのね、あの、その、わたし」
十四松「さくらちゃん、落ち着いて? 何があったのか、落ち着いて話して?」
「おそ松くんが……! おそ松くんがおかしいの!」
十四松「おそ松兄さんが? なんでなんでー?」
「いきなり、わたしをこのまま帰すわけないとか言い出して……それで……」
十四松「えーっ! おそ松兄さん、そんなこと言ったの!?」
十四松くんは、驚きの声をあげ、そして。
十四松くんとは思えない、黒い澱をはらんだ瞳で笑った。
「えっ……?」
十四松「計画とちがうじゃーん。でも、ま、いっかー!」
血の気がひいていく。
十四松くんが何を言っているのかわからない。