第2章 再会【一松、おそ松+十四松】
「おやすみ、カラ松くん……」
わたしは、カラ松くんの背中にぽつりと呟いた。
理由のわからない涙が、こぼれ落ちた。
***
目覚めたときには、カラ松くんはいなかった。
辺りは明るくなっていて、窓から昼の日差しが差し込んでいた。
居間の壁にかけられたアナログ時計に目をやると、針はちょうど12のところで重なり合っていた。
「もうお昼なんだ……」
ずいぶん長いこと寝てしまった。
みんなはどこにいったんだろう?
一松くんとは顔を合わせたくないな。
わたしは、急いで身支度をして、誰かが帰ってくる前に、と荷物をまとめて帰ろうとした。
しかし、わたしが帰るべく居間のふすまを開けると、そこにはおそ松くんが立っていた。
「わっ……! びっくりした……」
おそ松「あれ?さくら、もう帰んの?」
「う、うん。お母さんたちも心配してるだろうし、そろそろ帰るよ」
おそ松「もっとゆっくりしていけばいいのに。ってか、体調だいじょぶ? 意識ぶっとぶほど体調悪かったんだろ?」
「それは……もう大丈夫だよ。迷惑かけてごめんね」
おそ松「迷惑なんて思ってないけどさ、やっぱり心配だよ。もうちょっと休んでいけよ」
「ううん、ほんとに大丈夫だから。ありがとね、お邪魔しました」
わたしは、おそ松くんの横をすり抜けて、居間を出ていこうとした。
……しかし、そのとき。
おそ松くんの手が、わたしの腕をつかみあげた。
「いたっ…」
おそ松「ざーんねん。このまま帰すわけねーじゃん」
「えっ……?」
おそ松くんを見ると、彼は、見たこともないような恐ろしい笑みを浮かべていた。
「……っ!」
思わずあとずさるわたしを見て、おそ松くんは、声をあげて笑う。
おそ松「ははっ、何びくついてんだよ。当たり前だろ?やっとまた会えたのに、離すわけねーじゃん」
「な、なに言ってるの、おそ松くん……」
おそ松「ずっと会いたかったんだよ、さくら♪」
おそ松くんは、わたしを引き寄せると、背中を壁に叩き付けた。
そして、壁に手をついて、わたしを閉じ込めると、にやりと笑った。
何をされるのかわからなくて、
怖くて、
涙があふれる。