第19章 わたしの気持ち《一松END》
それから、わたしと一松くんが一緒に過ごす時間は、がくんと減った。
……というよりも、絶対にふたりっきりにならないようにカラ松くんが気を配ってくれるようになったのだ。
同じ空間にいても、そこには誰かしら他の兄弟がいたし、夜も、一松くんの隣ではなく、十四松くんの隣で眠るようになった。
一松くんは、それがとても不満なようで、
いつもわたしに黒々しい視線を向けてきた。
一松くんとすごす時間が減った代わりに、今度は、カラ松くんとふたりで過ごす時間が増えた。
カラ松くんは、一松くんがしてくれたように、わたしに優しく接してくれて、デートにも連れていってくれた。
でも……
わたしは、やっぱり一松くんではなくカラ松くんが好きだ、とは言えなかった。
あんなふうに殺されかけたのに……わたしはやっぱり一松くんのことが……
カラ松「どうした、さくら。考えごとか?」
はっと顔をあげると、カラ松くんの大きな瞳と目が合った。
いけない……今はカラ松くんと公園でデート中だった。
デート中に公園のベンチで考えごとなんて……だめな女だな、わたし。
「ううん……なんでもないよ。ごめんね」
カラ松「うそ。顔に書いてある」
カラ松くんは、わたしの頬を指先でぷにっと突ついた。
「……んぐ」
カラ松「もしかして、一松のこと?」
……図星。
カラ松「ビンゴだったみたいだな」
「その……あの日、わたしを包丁で刺し殺そうとしたのって、本当に一松くんなのかな……」
カラ松「と言うと?」
「だって、一松くん、あの日は路地裏に行ってたって言ってるし……嘘をついているようにも思えなくて」
カラ松「……そうだな。俺も、一松がさくらを刺し殺そうとしたなんて、嘘であってほしい」
カラ松くんは、そう言って、息をついた。
そして、でも、と付け加えた。
カラ松「じゃあ、さくらを刺し殺そうとしたのは誰だったんだ?」
「それは……」
それは……わからない。
でも、わたしには、一松くんが嘘をついているとはどうしても思えなかった。
一松くん…
もう一度、ふたりで話せないかな。