第19章 わたしの気持ち《一松END》
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???「……さくら?」
この声は……一松くんの声だ。
???「え……どうしたの? 何があったの?」
一松くん……わたしを心配してる?
???「ねえ、さくらってば……しっかりして」
なんでそんなこと言うの?
だって……
わたしを殺そうとしたのはあなたでしょ……?
「う……っ、」
一松「あ……さくら。よかった、気がついた」
目をひらくと、そこに一松くんがいた。
心配そうな、戸惑っているような、そんな顔。
と、その瞬間。
さっきの出来事が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。
わたしは、一松くんと屋根の上にのぼって、
一松くんに、自分とカラ松くんのどっちが好きかと訊かれて、
それで答えられずにいたら、いきなり一松くんが包丁を取り出して、
そして……
「あッ、あああああッ!!!」
わたしは、目の前の一松くんを突き飛ばした。
そうだ。
わたしは、一松くんに殺されかけたんだ。
「こっ、来ないで!! 近寄らないで!!!」
一松「えっ……な、なに。どうしたの、さくら」
一松くんは、何故か、困惑の表情を浮かべる。
「しらばっくれないでよ!! さっき……あなたは、さっきわたしをその包丁で……!!!」
そこで、一松くんの右手に何も握られていないことに気がつく。
一松「包丁……?」
きょとんと首を傾げる一松くん。
わたしが何を言っているのかわからない、とでも言いたげな顔だ。
一松「さくら、ちょっと落ち着いて…」
「むっ、むりだよ! 落ち着くなんて……!!」
一松「ね、深呼吸して。ちゃんと僕の目を見て……」
「いやっ…いやああっ!!」
来ないで!
こっちに来ないで…
助けて…
だれか、助けて、
「かっ……カラ松くんっ……助けて」
一松「っ……」
カラ松。その名前を聞いたとたん、一松くんの顔が、かすかに歪んだ。
一松「…ねえ、さくら。僕、さくらになんかした?」
「どっ、どの口がそんなこと言って…!」
一松「ほんとに分かんないんだけど……」
一松くんの声に、少しだけ苛立ちの色が浮かんだ。