第19章 わたしの気持ち《一松END》
突然の出来事に、身体が動かない。
一松くんは、わたしの胸ぐらをつかみあげ、天高く包丁を振り上げた。
その包丁の切っ先は、まぎれもなく、わたしを捕らえていた。
「……っいや!」
わたしは、一松くんの手をつかみ、彼を思いきり突き飛ばした。
びりっと音がして、一松くんに掴まれていた服の胸元が破けた。
無我夢中で屋根の上を走り、窓から家の中に逃げ込む。
足音でわかる……一松くんは追いかけてきている。
急いで階段を駆け下り、一階に降りる。
「だっ…だれか助けて……!!」
まずい…!このままでは殺される!
だって、
一松くんのあんな目、初めて見た。
狂気と殺意をはらんだ、ぎらついた目…
あれは、冗談でも脅しでもない。わたしを殺そうとしている目だった。
「おねがいっ! だれか…!カラ松くんっ!!」
そこで、ようやく、わたしと一松くん以外のみんなは出かけていることを思い出す。
「くっ……!」
だったら、家の外に逃げて、誰かに助けを求めるしかない。
しかし、そのときだった。
がしっと背後から腕をつかまれた。
一松「ねえ……なんで逃げんの」
「ひッ……!放して……!」
怖い……怖いこわいこわいコワイ!
誰か、誰か助けて…!
しかし、わたしの声が誰かに届くはずもなく。
わたしは、その場に、押し倒された。
一松くんは、わたしのお腹の上に馬乗りになり、わたしの鼻先に包丁を突きつけた。
「っ……い、いや…おねがい、助けて……っ」
恐怖のあまり、頬を涙がぼろぼろと伝う。
一松くんは、そんなわたしを見て、満足げに笑った。
そして。
一松「……大丈夫だよ。ちょっと痛いだけだから」
わたしに向かって、包丁を振り下ろした。