第19章 わたしの気持ち《一松END》
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一松くんと付き合い始めて、一週間が過ぎた。
あれ以来、わたしたちは、今までと比べて特に何が変わるわけでもない関係をつづけている。
キスをして、身体を重ねて、たまに外に出かけるくらい。
けれども、一松くん自身は、あきらかに変わった。
わたしが彼女になったからか否かはわからない。
でも、彼は、誰が見てもわかるくらい優しくなった。
前みたいにむりやり身体を求めてくることもない。
セックスをするときも、わたしをいたわりながら優しくしてくれる。
だから……
わたしは……
わたしも、一松くんに優しくしたいと思うようになっていた。
わたしも、一松くんに優しくしたい。
一松くんの力になりたい。
支えに……なりたい。
それは、つまり、好きだということなんだろうか。
でも、わたしは、カラ松くんのことが好きで……
一松「さくら、ちょっといい?」
名前を呼ばれて我に返ると、一松くんがわたしの顔を覗き込んでいた。
どうやら、お昼を食べたあと、みんなが出かけてしまい、一人で居間でぼーっと考えごとをしていたみたいだ。
「う…うん! どうしたの?」
一松「……ちょっと外の空気吸わない? あまり家の中にこもってばかりいると身体に悪いよ」
「えっ……ああ、そうだね」
一松くんが健康に気をつかうようなことを言うなんてめずらしいな。
というか、どちらかと言うと、一松くんだって家の中にこもってばっかりだし。
一松「さくら、うちの屋根の上ってのぼったことないよね?」
「屋根の上……? うん、ないけど…」
一松「じゃあ、一緒にのぼろ……? すごく気持ちいいから」
「えっ、いいの? のぼってみたい!」
屋根の上にのぼるのなんて、幼稚園のとき以来だ。
昔は、わたしも結構やんちゃな女の子で、男の子に混ざって危ない遊びをしたりしていたんだけど、
小学校に上がるのを境に、お母さんに「女の子はもっとお淑やかにするべき」と教えられて、めっきり外遊びをやめてしまったのだ。
だから、屋根にのぼるなんて、すごくわくわくする。
子供のころに戻ったようで、思わず笑みがこぼれた。