第18章 好きって言って【カラ松、一松】
できあがったケチャップライスにオムレツをのせる。
ちょっといいところを見せたくて、半熟にしてみた。
真ん中をナイフで切ると、とろりと半熟の卵が溢れ出した。
…うん、いいかんじ。
最後に、ケチャップで猫の顔を描いて、完成。
我ながらに美味しそうだ。
「一松くん、できた!」
一松「美味そうじゃん。料理、上達したんだね。高校のときは散々だったのに」
「そ、それは言わない約束……!」
たしかに、あのころ、わたしの料理の腕前は散々なものだった。
砂糖と塩を間違えるとか、そんなドジっ子レベルの可愛いものじゃなくて、本当の本当に下手だった。
だから、わたしがこのレベルまで上達したのは、奇跡に近い。
「冷めないうちに食べよう? あ、一松くん、スプーンもってきて」
一松「…うん」
できあがったオムライスをもって、居間に向かう。
…と、電気をつけようと伸ばした手を、一松くんにつかまれた。
「ん……?」
一松「…まって。電気、つけなくていい」
「えっ…でも暗くて何も見えないよ?」
一松「いいから」
そう言って、一松くんは、部屋の隅っこにある箪笥の引出しを開けて、中から何やら白い棒状の物体を取り出した。
「なあに、それ?」
一松「……蝋燭」
ろうそく?
よく見ると、それは、薄い桃色の蝋燭で、ろうの部分に可愛らしい飾り模様が彫られていた。
一松「前にトド松がどこかからもらってきたんだけど、使う機会とかないし、そのままになってた」
「へえ〜! かわいいね。わたし、こういうの好き」
一松「だと思った……」
あ……もしかして、わたしが好きそうだから出してきてくれたのかな?
だったら、すごく嬉しい。
一松くんは、マッチを擦って、蝋燭の先に火を灯した。
もわーっとあたたかな光が広がる。
「ん〜……なんか落ち着くね。しあわせ……」
一松「……あっそ。それなら良かった」
ふたり並んでテーブルの前に座る。
「オムライス、食べないの?」
一松「……食べるよ」
一松くんは、スプーンを手にとり、ほかほかと湯気をたてるオムライスを、ひとくち分すくいあげた。