第18章 好きって言って【カラ松、一松】
それから、パーカーとジャージに着替えた一松くんを混ぜて、みんなで鍋を食べた。
けれど、あんなことがあった後では、やっぱり少し気まずくて。
美味しいはずの鍋も、あまり味がわからなかった。
夕飯のあと。
鍋を片付け終わって居間に戻ると、片付けを手伝わずにテレビを見ていたおそ松くんに、ちょいちょい、と指で呼ばれた。
他のみんなは、まだ台所で洗い物をしていたり、二階に行ってしまったり、とにかく居間にはわたしとおそ松くんしかいない。
わたしは、大人しくおそ松くんの隣に腰をおろした。
「どうしたの……?」
おそ松「さっきの続きだけど……」
さっきの続き。
つまり、わたしと一松くんのデートの話だろう。
「うん……」
おそ松「ごめん。悪いと思ったけど、十四松とトド松に尾行させたんだわ。一松とさくらのこと」
「うん、知ってる」
おそ松「で、ふたりが付き合ってるってことも、カラ松から聞いた」
おそ松くんの口調はおだやかだった。
怒っている様子はないし、唇には笑みすら浮かべている。
おそ松「……さくらが一松を好きだって言うなら、それはそれで仕方ないし、俺が口出しするようなことじゃないよ? でもさ、さくらって、カラ松のことが好きだったよね? なんで一松?」
「あ……それは……」
あまり説明したくない。
それに、今日の一松くんはすごく優しかった。まるで、高校のころみたいに。
だから、脅されて仕方なく付き合ってる、なんて言いたくなかった。
おそ松「……んー、ま、いいけどさ。さくらにも言いたくないこととかあるだろうし」
「……てか、おそ松くん、怒らないの?」
おそ松「んー? 怒るって、なにを?」
「わたしが一松くんと付き合ってること……。十四松くんとトド松くんにはすごく怒られたし、おそ松くんも怒ってると思ったんだけど……」
すると、おそ松くんは、鼻の下をこすって笑った。
おそ松「べつに怒んねーよ? そりゃあ俺だってさくらのこと好きだし悔しいけど。でも、ほら、俺って弟大好きだからさ? 一松にも幸せになってほしいわけよ」
「……そ、そっか。それならいいんだけど」
おそ松くんの笑顔には、なんだか違和感があったけど、怒ってないならそれでいい。