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【おそ松さんR18】君がため

第17章 こっち見て【十四松+トド松】




わたしが説明すると、一松くんは、なにを考えているのかよくわからない無表情で、「ふーん」と小さくつぶやいた。


「これね……わたしが演劇部に入って初めて演じた作品なんだ」

一松「……そうなんだ。さくらはなんの役だったの?」

「えっ……それ訊いちゃう?」


正直、あまり言いたくない。

だって、わたしがもらった役って、貴族Bとかいう脇役中の脇役だったんだもの。

台詞も一個しかなかったし。


一松「わかった……察した」

「そう……ありがとう、一松くん」

一松「でも、ほんとは主役がやりたかった?」

「そ、そりゃあ、もちろん……!」


練習中も、何度サンドリヨンがわたしだったら、って考えたことか。

もちろん、主役をやりたかったっていうのもあるけど、何よりも……


一松「……王子の役がカラ松だったから?」

「えっ!?」


驚いて一松くんを見ると、一松くんは、なんとも悲しげな、寂しげな、切なげな、そんな顔でこちらを見ていた。


「一松くん……」

一松「同じ顔なのに。なんでさくらはカラ松を好きになっちゃったの……」

「……っ」


どうしよう。

どうすればいい。

一松くんのこんな顔、初めて見た。


「ごっ……ごめん…」


やっと口から出てきたのは、そんな謝罪の言葉だった。

しかし、そのとき。


一松「ふ……ふは」


突然、一松くんが、吹き出すように笑った。


「え……?え?な、なに?なんで笑うの?」


状況がわからず困惑するわたしの顔をのぞきこみ、一松くんは、にたりとギザ歯を見せて笑った。


一松「…冗談だよ。さくらがどんな顔するか見たかっただけ」

「へっ……?」


どういうこと?

じゃあ、今、一松くんがしおらしい顔したのは、冗談ってこと……?


だ、だまされた……



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