第17章 こっち見て【十四松+トド松】
一松くんに連れられてやって来たのは、駅裏だった。
駅裏は、あまり栄えているとは言い難く、どちらかと言うと公園や住宅が多い。
こんなところで何をするんだろう……
「ねえ、一松くん……」
不安になって一松くんの手を引いたそのとき。
一松くんの足が止まった。
一松「……ここ」
「え?」
一松「だから、ここ。ついた」
顔をあげると、目の前にあったのは、小綺麗な建物。
この町で唯一の図書館だった。
「図書館……?」
一松「あんた、本とか読むの好きじゃん。高校のころも放課後よく教室で本読んでたし…」
「あ……うそ、覚えててくれたの?」
信じられない。
一松くんが、そんなことを覚えててくれたなんて。
確かに、わたしは、高校時代、放課後によく教室に残って読書をしていた。
今でも、本は大好き。
一松「晩飯の時間までには帰らないといけないけど……それまで結構時間あるし。好きなの読めば」
「一松くん……ありがとう。嬉しい」
本当に、心の底から嬉しかった。
こんな素敵なデートを考えてくれていたなんて。
ラブホテルに直行するんじゃないかなんて疑って、わたしは本当に馬鹿だ。
一松「…なんかまた泣きそうになってない?」
「だ、だって……」
一松「あーもう。泣かせようと思って連れてきたわけじゃないんだけど」
「ごめんなさい……」
一松「ほら、行くよ」
一松くんの手が、わたしの手を引いた。