第17章 こっち見て【十四松+トド松】
「ご、ごめん! なんか、目にゴミが入っちゃって……はは」
一松「…あっそ」
一松くんは、ぶっきらぼうに返事をすると、わたしの手を引いた。
あ……またいつもの一松くんに戻っちゃったな。
なんだか、少し切ない。
家を出て、駅前への道を歩き出す。
それにしても、わたしが喜びそうなところってどこだろう?
「一松くん」
一松「ん?」
「まさかとは思うけど、ラブホテルとかじゃないよね?」
一松「……は?」
わたしの言葉が意外だったのか、一松くんは大きく目を見張った。
一松「あんたさ、僕のことなんだと思ってんの。わざわざデートに連れ出してラブホに直行するような奴だと思ってたの?」
「そ、そうじゃないけど……この前、おそ松くんとデートに行ったときは、最後にホテルに連れて行かれたから……」
一松「……っ」
そのとき、一松くんの足が止まった。
「え…どうしたの、一松くん」
一松「あのさあ……」
一松くんの目が、わたしをぎろりと睨みつける。
一松「なんで、今、おそ松兄さんの名前出すの。しかも、デートしたとかホテル行ったとか、すげー妬けるんですけど」
「あ……」
一松「ま、別にいいけど。もともと、あんたは僕たちみんなのものだったんだし」
今は僕のだけど、と一松くんは付け足して、にたりと不敵に笑った。