第13章 君を好きになった理由
その日から、僕は、毎日きちんと家に帰るようになった。
学校にも行った。
さくらちゃんにああ言われたことが理由かはよくわからないけど、
でも、仲間と悪さをしたり夜遊びをしたりすると、あのときのさくらちゃんの笑顔が頭をよぎって、なんだか自分がしていることがひどく滑稽に思えたのだ。
僕がきちんと学校に行き、毎日家に帰るようになって、兄さんたちはとても安心した様子だった。
勘の鋭いおそ松兄さんは、さくらちゃんが関係していることに誰よりも早く気がついて、からかってきた。
いつもなら、「そんなわけないじゃん」とムキになる僕だけど、そのときばかりは否定できなかった。
トド松「うわ……降られた」
僕が学校に行くようになって一ヶ月ほど経ったときのこと。
その日、授業が終わって帰路につこうと昇降口を出た僕は、そこで初めて外がバケツをひっくり返したような土砂降りであることに気がついた。
朝に家を出たときは、眩しいくらいの晴れだったし、朝ごはんを食べながら見た天気予報のお姉さんも降水確率は0パーセントだと言っていた。
トド松「どうしよう……折り畳みなんて持ってないし」
学ランを脱いで、頭にかぶって帰るというのも手だ。
でも、学ラン濡らしたら、母さん怒るだろうなあ……
クリーニング代とか地味に高いし。
僕は、仕方なく、雨がやむまで教室で待機しようと、きびすを返した。
そのとき。
トド松「あっ……」
「……トド松くん?」
振り向いたところに、さくらちゃんが立っていた。