第13章 君を好きになった理由
それからも、僕が夕方家に帰ると、大抵さくらちゃんがいた。
どうやら、部活帰りにうちに遊びにくるのが日課になっているようだ。
カラ松兄さんがさくらちゃんと仲良くなったことで、他の兄さんたちも、自然とさくらと仲良くなっていた。
そんなある日のこと。
いつものように、家に帰ると、居間にはさくらちゃんしかいなかった。
「あ、トド松くん。おかえり」
トド松「ただいま……って、なんでさくらちゃん一人でうちにいるの? 兄さんたちは?」
ちょこんと座ってテレビを見ていたさくらちゃんに問う。
「カラ松くんと一緒に帰ってきたんだけど、カラ松くん、何か用事ができたとかでどこか行っちゃったんだよね……。すぐ戻るって言ってたけど」
トド松「ふうん、そっか」
さくらちゃんを家に連れてきておいて、留守番させるなんて。
カラ松兄さん、よっぽど大事な用事なんだろうな……。
トド松「他の兄さんたちはまだ帰ってきてないの?」
「うん。今日は一緒じゃなかったから……」
トド松「そうなんだ」
やばい……なんか、緊張する。
でも、さくらちゃんを居間に一人残すのは、なんだか気が引ける。
僕は、さくらちゃんの隣に腰をおろした。
すると。
「ねえ、トド松くん」
トド松「は、はい?」
突然話しかけられて、思わず声が裏返った。
「あはは、どうしたの。そんなにびっくりした?」
トド松「い、いや、びっくりしたっていうのもあるけど……さくらちゃんとふたりきりなのって初めてだから、緊張してるっていうか」
……って、僕、なに言ってるの!?
こんな発言、僕らしくない。
というか、今の僕、チョロ松兄さん並みに童貞丸出しじゃない?
なんで。僕は、それなりに女の子と遊んだりしているから慣れてるはずなのに。
「あ…そ、そうなの? 実は、わたしも。ちょっと緊張してる」
トド松「……え?」
眉を下げて笑うさくらちゃんに、目を見張る。
「だって、トド松くん、学校に来ないしさ。こうやって学校の外でしか会えないでしょ? だから、トド松くんとふたりきりって、なんか不思議な感じがする」