第13章 君を好きになった理由
その女の子に、僕は見覚えがあった。
確か……同じクラスのさくらちゃんだ。
地味でも派手でもない、でもとても愛嬌があって可愛らしい女の子。
と、そのとき。
不意に、おそ松兄さんの目がこちらを向いた。
おそ松「……あれ。トド松じゃん」
トド松「うぐっ」
やばい。覗き見してることバレた!
おそ松「おまえそんなとこで何してんだよ? 早くこっち来いよー」
バレてしまったものは仕方ない。
僕は、扉を開けて、居間の中に足を踏み入れた。
チョロ松「おかえり……って、ほんとはもっと言いたいことはたくさんあるんだけどさ」
トド松「うるさいな……チョロ松兄さんが言いたいことなんて、わかってるし」
いつものように反抗的な態度をとってから、
ふと、さくらちゃんが目の前にいることを思い出す。
トド松「……てか、この子、なに?なんで僕らの家にいるの?」
「ごめんね、トド松くん。お邪魔してます」
さくらちゃんは、困ったように眉を垂れて笑い、ぺこりと頭を下げた。
「わたし、梅野さくら。同じクラスなんだけど……覚えてないかな?」
トド松「……覚えてるよ。そっちこそ、僕のこと知らないと思ってた」
「なに言ってるの、トド松くん。知らないわけないじゃん」
さくらちゃんは、そう言って、にこりと笑った。
その笑顔があまりにも眩しくて、胸がとくんと高鳴った。
トド松「で、どうしてさくらちゃんがここに?」
「あ…えっとね。わたし、カラ松くんと同じ演劇部なんだけど……最近、家がご近所さんだってこと知ったんだ。それで、近所なら一度遊びに来いって誘われて……それがたまたま今日だったの」
トド松「ああ……そうなんだ」
じゃあ、つまり、カラ松兄さんに連れて来られたってわけか。
カラ松兄さんのほうを見ると、兄さんは気まずそうに僕から目をそらした。
そりゃそうか。最後に会ったとき喧嘩しちゃったんだもんね……