第13章 君を好きになった理由
『梅野さくら、ね。俺、名前は聞いたことあるんだけど、顔は知らねえんだよなあ』
『え、まじで? これだよ、この子』
『どれどれ……うわ、結構かわいいじゃん』
『こんな子とヤれるなんてラッキー』
行間休みの校舎裏。
一服するために、ひとけのない場所を選んだつもりだったのに、そこには先客がいた。
声から推測するに、4、5人はいるだろうか。
そっと覗くと、そこには、案の定、男子生徒が4人たむろっていた。
4人は、ひとつのスマホを覗き込んで、にたにたと下卑た笑いを浮かべている。
スマホを持っている男の背後に忍び寄り、その手から、ひょいとスマホを取り上げる。
あっ、と4人の目が俺のほうを向く。
『なっ、なんだ、てめえ!』
『こいつ、見覚えあるぞ……!ほら、 あの有名な6つ子の一人だよ!』
ぎゃーぎゃーとうるさい男たちを無視して、取り上げたスマホに目を向ける。
そこには、さくらの顔写真がうつっていた。
おそ松「あらら……やっぱり」
『なんのことだ! 返しやがれ!』
男の一人が、腕をのばしてスマホを奪い返そうとする。
俺は、スマホを持った手を背中に回し、それをひょいとかわした。
おそ松「残念だけど、これはタダでは返せないなー」
『はあ!? てめえ、なんなんだよ?』
『でもさ、6つ子の一人ってことは、こいつ、カラ松の兄弟ってことじゃね?』
え? なに、こいつら、カラ松のこと知ってんの?
ま、別にいいけど。
おそ松「そーだね。俺は、カラ松の兄貴のおそ松な」
俺は、目の前の男の胸ぐらをつかみ、その腹に膝で蹴り上げた。
『ぐはッ……!』
おそ松「……でも、さくらのことを大事に思う気持ちは、カラ松にも負けねーから」
にたり。
歯を見せて笑ってみせると、男たちは、ひっ、と怯えた声をもらした。
おそ松「……もしスマホ返してほしかったら、ひとつ教えてくんねーかな?」
『な、なにを?』
おそ松「さくらに何しようとしてたのか」
男たちは、顔を見合わせた。
……ったく、なよっちい奴らだなあ。
ちょっと膝蹴りしたくらいで、こんなにビビっちゃって。