第13章 君を好きになった理由
「い、言えないよ、そんなの……」
松代「あらっ! そういう反応をするってことは、6人の中に気になる人がいるのね! 誰かしら〜。母さん、わくわくしちゃう」
おそ松「ハイハイ。さくらも困ってるから、そのへんにしときなよ、母さん」
俺は、母さんを台所に押し戻して、みんなに「俺、制服着替えてくるから」とだけ告げて二階に向かった。
二階の部屋には、電気が灯っていた。
そして、そこには、唯一居間にいなかった兄弟があぐらをかいて座っていた。
おそ松「一松、ただいまー」
俺に扉に背を向けるようにして座っていた一松の肩が、びくっとはねた。
一松は、首だけひねって俺を振り向き、相変わらずの無表情で、「おかえり、兄さん」と言った。
おそ松「なーにしてんの。またアレ?」
一松「……うん。おそ松兄さんも、見る?」
おそ松「うん、見して見してー」
一松は、俺に向かって10枚ほどの写真の束を差し出した。
それを受け取り、床によいしょと腰をおろす。
おそ松「どれどれ〜……うおっ、いいね。可愛く撮れてんじゃん」
一松「でしょ」
写真にうつっているのは、ぜんぶ、さくらだ。
昼休みに教室で友達と談笑しているさくら。
授業中、先生にあてられて黒板の前でチョークをにぎっているさくら。
下校中、カラ松の隣を歩くさくらの背中……
おそ松「しっかし、さくらもかわいそーだよねえ。今も、自分がこんなことされてるって知らずに、下でメシ食ってるんだぜ?」
一松「それがまた興奮するんだけどね」
おそ松「おまえも大概だよなあ。学校では成績優秀な真面目キャラなのに。どこで道ふみはずしちゃったんだか」
一松「わりと最初からこんなだよ、僕」
おそ松「えー、そうだったの? お兄ちゃん、一松は昔からずっと真面目ないい子だと思ってたよー」
写真をかき集めて、一松に返す。
一松は、それを箪笥の自分の引出しにしまった。
一松「じゃ、僕、下に戻るから」
おそ松「あいよ。俺も着替えてすぐ行くから」
一松と俺は、よく似ている。
一松は、さくらのことが好きなのに、こんな形でしか欲求を解消できない。
そして、俺も……