第13章 君を好きになった理由
居間に行くと、既に夕飯ができていて、みんなでテーブルを囲んでいた。
まだ料理に箸はつけてないみたいだけど。
トド松「あ、おそ松兄さん。おかえりー」
チョロ松「やっと帰ってきた……。ったくどこほっつき歩いてたんだか」
おそ松「わりーわりー。ちょっと野暮用があってさ」
俺が適当に濁して答えると、みんなは、ふうん、と興味なさそうに呟いた。
と、そのとき、台所から母さんが顔をのぞかせた。
松代「あら、おそ松。帰ってきたのね。おかえりなさい」
おそ松「ただいま、母さん」
松代「今日はさくらちゃんが来てくれたのよ〜。母さん、嬉しいわ♪」
「いつもお邪魔しちゃってすみません……」
へこりと頭を下げるさくらに、母さんは、慌てたように首を振った。
松代「なにを謝っているの、さくらちゃん。私、本当に嬉しいのよ。うちの6つ子たちが、さくらちゃんみたいな可愛い女の子を連れてくるようになって。まるで娘ができたみたい」
おそ松「母さん、ずっと娘がほしいって言ってたもんな」
松代「そうそう。それに、さくらちゃん、ほんっとうにいい子だし。このまま、6人の誰かと結婚して本当の娘になってほしいくらいよ」
「えっ!? けけけけ、け、結婚!?」
さくらは、びくっと身体を震わせて、動揺の声をあげる。
いくらなんでも動揺しすぎだ。……そんなところも可愛いけど。
松代「ぶっちゃけて、うちの息子たちの中にさくらちゃんのタイプはいないのかしら?」
「そ、それは……っ」
さくらは、胸の前で手をにぎって、うつむいた。
さくらがカラ松のことを好きなのは、誰の目にもあきらかで。
たぶん、俺以外の兄弟も気がついていると思う。
カラ松「さくらの好きな人、か。それは俺も知りたいものだな」
……当の本人をのぞいて。