第2章 再会【一松、おそ松+十四松】
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「上から二段目… 上から二段目… あ、これかな?」
二階の子供部屋の奥にある、茶色の箪笥。
その二段目の引出しに、白いシールが貼ってあり、青のマジックペンで「からまつ」と書いてあった。
そっと引出しを開けると、ふわっと香水の香りがした。
「カラ松くん、香水なんてつけるんだ……」
引出しの手前にあったマリンブルーの香水瓶を手にとる。
そういえば、昔からお洒落には気のつかえる人だったなあ……
髪の毛とかも、ちゃんとワックスでセットしてたし、服にもなんか変なこだわりあったし。
「彼女、いてもおかしくなさそうなのに……」
ぽつり、呟いたそのとき。引出しの奥に、分厚いアルバムを見つけた。
あった。
これだ。わたしたちの卒業アルバム。
そっと手に取り、ぱらぱらとめくってみる。
なつかしい。
「……あ」
ふと、知らない女の子と笑い合っているカラ松くんの写真を見つけた。
おそらく、修学旅行のときの写真だ。女の子が誰なのかは分からないけど、その写真の中のカラ松くんは、すごく楽しそうだった。
なぜだか、ずきりと胸が痛んで、わたしは思わずアルバムを閉じた。
せっかくだけど、これを見るのはやめよう。
アルバムを元の場所に戻し、引出しをしめる。
「この箪笥って……引出しが割り振られてるのかな?」
ふと、他の兄弟の引出しも気になって、一番上を開けてみる。
いけないと分かってはいるけど、好奇心が勝ってしまった。
一番上の段は、おそ松くんの引出しだった。
中身は、大量のレシート。そして、成人向けのいかがわしい雑誌やら本やらがどっさり。
「ご、ごめんなさい、おそ松くん……」
わたしは、見なかったふりをして、引出しをしめた。
つぎに開けたのは、三段目。
たぶん、これはチョロ松くんの引出し。
中には、地下アイドルの生写真や、DVD、グッズなんかがたくさん。その奥に、タ○ンワークなどの就活雑誌が数冊入っている。
真面目なんだか真面目じゃないんだか、よくわからない。
三段目の引出しをしめて、四段目を開ける。
このころには、もう人の箪笥をあさっているという罪悪感もなくなっていた。
たぶん、この並び順だと、四段目は一松くんの引出しだ。
しかし。
引出しをあけたわたしは、絶句した。