【ハイキュー!!】夢の続き ~another story~
第4章 episode III :孤爪 研磨はいつも傍観。
おれが高校一年になった時。
葵が、中学三年で受験を迎えた頃。
葵がおれの家に訪ねてきた。
珍しくクロはいなかった。
『どうしたの?』
「あ、あのね研磨……。相談があるんだけど……」
少し曇った表情。また何かあったのかとヒヤリとする。
「私、東京を出ようと思う、の」
ほんの少し、時が止まった感覚だった。
やっとの思いでその言葉を理解する。
『どこへ行くの?』
「宮城」
遠い……。
『どうして?』
「教えてもらいたい監督さんがそこにいるの」
『そっか』
彼女にはいじめを受けた過去がある。そのせいで、二度おれたちは彼女を失いそうになった。
そういう理由じゃなくて、ホッとしたけど、けど……。
部屋が静まり返る。
空気が重い。
言いたいことがあるのに、なかなか出せない。
「研磨……」
『な、なに?』
「ちゃんと言えていなかったから、今言うね……。
今まで、私を助けてくれてありがとう。私がこうして生きていられるのは、研磨達のおかげだよ」
『別にお礼することじゃない。当たり前のことしただけ。宮城へは、いつ行くの?』
「入試の二日前、かな。そのままそこに住むよ」
受かれば、だけどね、と笑う彼女。
どこか寂しげだった。
おれだって、寂しい。
けど、そんな顔したら葵を困らせるだけ。
だからおれも笑顔でこういった。
『葵なら絶対受かる。大丈夫』